認知症の「徘徊」はなぜ起こる? 行方不明を防ぐための原因理解と対応・対策ガイド
2025/12/01
目次
「徘徊」という言葉は、
周囲の目から見た“うろうろ歩き回る”姿を表しています。
でも実際には、ご本人にとって理由も、目的も、感情もある行動です。
トイレを探しているのかもしれない。
昔住んでいた家へ帰ろうとしているのかもしれない。
不安な気持ちを落ち着けたくて、身体が自然と動き出しているのかもしれない。
認知症の「徘徊」は、
本人が言葉でうまく説明できないSOSや不安、記憶の混乱が混ざり合って表れる行動であり、決して“意味のないうろつき”ではありません。
いっぽうで、徘徊による行方不明は年々増加しており、
事故・ケガ・夜間徘徊による低体温など、命に関わるケースもあります。
家族にとっては大きな不安となり、介護負担も重くなりがちです。
そこで本記事では、
- なぜ徘徊が起こるのか(医学的・心理的・環境的な背景)
- 家族ができる“正しい関わり方”
- 自宅でできる予防策
- センサー・GPS・地域のサポート制度の活用
- 実際に行方不明になってしまった時の行動
までを、
専門的な内容を保ちながら、できるだけわかりやすく整理してお伝えします。
徘徊と向き合うとき、重要なのは
「行動を止めること」より、本人の目的と不安を理解しながら“安全を守る”という視点です。
そのために必要な知識と対策を、ここから順番に見ていきましょう。
認知症の徘徊は、
家族の不安や介護負担につながるだけでなく、
命に関わるリスクを伴うことがあります。
まずは、日本でどれほどの人が行方不明になっているのか、
そして早期発見がなぜ重要なのかを、最新データをもとに整理します。
■ 行方不明者数は10年で約2倍に
警察庁の統計によると、
認知症またはその疑いで行方不明になり、警察に届け出が出された人は、2023年に1万9,039人。
これは、統計を取り始めた2012年(約1万人)のほぼ2倍にあたります。
つまり現在、1日あたり50人以上が行方不明になっている計算です。
しかも、これは警察に届けられた数値。
実際には、もっと多くの人が行方不明になっている可能性が高いのです。
年齢や病気が進めば進むほど外出が難しくなるイメージがありますが、実は多くの方が、
- 家族が目を離した“ほんの数分のあいだ”に
- いつも通りの外出のつもりで
- 自宅から離れた場所まで歩いたり、交通機関を利用して移動し、
行方不明になるケースが少なくありません。
「うちは軽度だから大丈夫」と過信せず、
誰にでも起こりうることとして受けとめる必要があります。
■ 行方不明後、時間が経つほど発見率は急激に低下する
行方不明になった場合、発見までの時間が非常に重要です。
- 行方不明後9時間を超えると、発見率が大きく低下するとされ、
- 行方不明になった人のうち 99.3%は1週間以内に保護される一方で、
- 2016年の研究(桜美林大学 老年学総合研究所)では、
“行方不明から5日が経過すると、生存率が0%になる” という報告もあります。
もちろん地域や環境、季節要因(暑さ・寒さ)、体力などにも左右されますが、
早期発見こそが命を守る最大のポイントであることは間違いありません。
■ 行方不明中の事故リスク ― 特に多い3つのケース
徘徊による行方不明では、以下のような事故が多く報告されています。
① 交通事故
道路に入り込んだり、信号の判断が難しくなるなどして、車との接触事故が発生。
② 転倒・転落
夜間や慣れない場所を歩くことで、溝や段差で転倒することがある。
③ 低体温・脱水
冬場は低体温、夏場は脱水や熱中症が大きなリスクに。
自転車や電動カート、自動車に乗って遠方まで行ってしまうケースもあり、
「徒歩の範囲だけ探していれば良い」というわけではありません。
■ 行方不明後の“意外な発見場所”
多くの研究や警察の現場では、
徘徊の動きには次のような傾向があるとされています。
- 自宅周辺を“円形”に探しても見つからないことがある
- 実際には まっすぐ一本道のように遠くまで歩いてしまう(“筋状の移動”) ケースが多い
- 公園・コンビニ・スーパー・駅・バス停などに立ち寄っていることが多い
- “昔よく行っていた場所”に向かっていることもある
このため、行方不明の際には“家の周囲をぐるぐる探す”だけでは不十分で、
行動パターン・馴染みの場所・よく使う交通手段を手がかりに探すことが必須となります。
■ 早期発見と対策は「生存率」「安全」「介護負担」のすべてに直結する
徘徊行動は、認知症の進行だけでなく、
- 本人の不安
- 記憶の混乱
- 環境の変化
- 身体の不調
など複数の要因が重なって起きるため、行方不明のリスクは誰にでも起こり得ます。
だからこそ、
“行方不明になる前”にできる予防や工夫、
“行方不明になってしまったとき”の行動を理解しておくことが、
本人の命を守り、家族の負担を軽減することにつながります。
次の章では、
そもそも徘徊がなぜ起こるのか、医学的・心理的視点から掘り下げていきます。
徘徊という行動は、
単純に“歩き回っている”ように見えても、その背景には複数の要因が入り混じっています。
まずは、医学的な変化から心理・環境要因まで、総合的に整理してみましょう。
■ 1. 記憶障害 ― 目的を忘れてしまう
認知症の代表的な中核症状である記憶障害は、徘徊と深く関係します。
- トイレに行こうとした
- 財布を探しに部屋を出た
- どこかへ向かって歩き始めた
こうした“最初の目的”が数分で消えてしまうため、
本人は「何かを探さなきゃ」と感じつつも、そのまま歩き続けてしまいます。
その結果、周囲から見ると
「目的もなく歩いている=徘徊」
と映るのです。
■ 2. 見当識障害 ― 時間・場所・人がわからなくなる
徘徊の大きな要因が見当識障害(けんとうしきしょうがい)です。
- 今が昼か夜かわからない
- 自宅にいるのに「家に帰らなきゃ」と思う
- 目の前の家族が誰だかわからなくなる
こうした混乱があると、
「本来いるべき場所にいない」という強い不安が生じます。
たとえば、
- “昔住んでいた家”へ帰ろうとする
- “昔の職場”へ向かう
- “家族が迎えに来るはずの場所”へ行こうとする
という行動は、
この見当識障害によって説明される典型的な現象です。
■ 3. 不安・孤独・ストレス ― 情緒面の揺れが行動につながる
認知症では、感情の揺れやすさ、不安の高まりも非常に大きな要因になります。
例として:
- 家族が留守で“独りぼっち”の感覚になる
- 夕方になると気分が落ち着かなくなる(夕暮れ症候群)
- 知らない人が多い場所で不安になる
- 引っ越し後、環境に適応できない
不安や恐怖の感覚が高まると、
「じっとしている方がつらい」→「身体が動き出す」
という状態になり、歩き回る行動として表れることがあります。
心理的ストレスは、認知機能への影響が出やすいだけでなく、
徘徊の“引き金”になることが多いのです。
■ 4. 過去の記憶が強く残る ― “昔の家に帰る”理由
認知症では、新しい記憶が残りにくい一方で、
昔の記憶(遠隔記憶)は比較的よく保たれます。
このため、
- 30年前の家が“今の家”だと思っている
- 今の家が“見知らぬ場所”に感じる
- 「会社に行かなきゃ」と思い込む
という現象が起きます。
本人の感覚としては、
“自分は家にいない”
“戻らないといけない場所がある”
という切実な緊張があるため、歩き出すことは“自然な行動”とも言えます。
■ 5. 身体の不調や薬の影響も“徘徊の引き金”になる
医学的には、徘徊を誘発する身体的要因もよく見られます。
- 便秘(不快感から落ち着かなくなる)
- 脱水(意識レベル低下や混乱)
- 痛み(場所がわからない状態で落ち着かない)
- 尿意・便意(トイレの場所を忘れる)
- 薬剤の副作用(特に抗コリン薬・睡眠薬)
特に薬剤性の“落ち着きのなさ”は、
本人にも家族にも自覚しづらいため、
徘徊を見たときには薬の見直しも重要な観点になります。
■ 6. 「本人にとっての“理由”」は必ず存在する
徘徊は、外側から見れば
「目的なくふらふら歩いている」
ように見えますが、実際には“意味”があります。
- 探しものをしている
- 安心できる場所に行こうとしている
- 誰かを探している
- 怖い記憶から逃れようとしている
- 体の不快感を紛らわせたい
- 昔の日課を再現しようとしている(会社に行く・出勤準備)
つまり徘徊は
「混乱した記憶・不安・環境の変化」が行動として表れたもの
であり、本人は“困らせようとしている”わけではありません。
■ 7. 軽度でも発生する ― 徘徊は進行度とは限らない
東京都健康長寿医療センターの研究では、
中等度以上の認知症では徘徊が増えるものの、軽度の段階でも行方不明が起こる
ことが明らかになっています。
つまり、
- 「まだ軽いから大丈夫」
- 「家族がいれば安心」
という考え方は危険で、
誰にでも起こり得る現象として備えておく必要があります。
■ まとめ:徘徊の背景には“複数の要因”が重なっている
徘徊は決して1つの要因だけで起こるものではありません。
- 記憶障害
- 見当識障害
- 感情の揺れやすさ
- 環境ストレス
- 身体の不調
- 過去の記憶の残り方
- 薬剤の影響
これらが複雑に絡みあって、“歩き出す”という行動として表れています。
次の章では、
徘徊が起きたときに家族がどのように関われば、
本人の不安を和らげ、安全につなげられるのかを具体的に解説します。
徘徊は、本人の混乱や不安が行動として表れたものです。
家族の立場から見ると
「危ない」「なんでこんなことを…」と感じやすいですが、
対応の仕方によって、
徘徊が落ち着くことも逆に悪化してしまうこともあります。
ここでは、臨床でも実際に効果がある“基本の関わり方”を紹介します。
■ 1. 怒らない・否定しない ― 感情記憶は残りやすい
認知症では、
- 何を怒られたか(エピソード記憶)はすぐに消える
- けれど、怒られたときの“怖さ”“不快感”(感情記憶)は残りやすい
という特徴があります。
そのため、
「まだ早いでしょ!」
「なんで勝手に出かけるの!」
などと強い口調で止めると、本人は理由は忘れても、
「ここは怖い場所」という感覚だけが残ります。
これは徘徊をむしろ悪化させる大きな要因です。
怒るのではなく、
- 声のトーンを落とす
- ゆっくりした速度で話す
- 否定より「そうなんですね」と受け止める
といった“安心を伝える話し方”が効果的です。
■ 2. 理由を聞いてみる ― 行動のヒントが隠れている
本人に理由を尋ねても、正確な答えが返ってくるとは限りませんが、
会話の中に重要なヒントが隠れていることが多いのです。
たとえば:
- 「家に帰らなきゃ」
→ 今の家に対する不安、環境の違和感、過去の家の記憶
- 「会社に行く時間だ」
→ 昔の習慣がそのまま残っている
- 「泥棒がいる」
→ 妄想の可能性、強い不安
- 「トイレを探してる」
→ 身体的不調や見当識の低下
理由は明確でなくても、一度気持ちを受け止めると、
本人の緊張がふっと緩むことがあります。
■ 3. 安心を届ける“声かけの型”
専門現場でよく使われるのが、
「共感 → 一緒に行動 → 別の選択肢」 の流れです。
例:
「帰らなきゃと思ったんですね(共感)。
ちょっと一緒にお茶入れましょうか(共同行動)。
落ち着いたら、また考えましょうね(別の選択肢)。」
この“階段のような声かけ”は、本人の不安をやわらげ、
徘徊の衝動を自然に落ち着かせるのに有効です。
■ 4. 気をそらす ― もっとも現実的で効果ある方法
徘徊の理由が不安や混乱にある場合、
行動そのものを止めるのではなく、別の行動に誘導する方がスムーズにいきます。
例:
- 「その前に、トイレに行っておきましょうか?」
- 「せっかくなので、温かいお茶をいれました」
- 「ちょっとこれを手伝ってもらえますか?」
心理学では「ディストラクション(気晴らし)」と呼ばれる手法で、
認知症ケアでも非常に使いやすいテクニックです。
■ 5. “危険だからダメ”より “安全にできる形を探す”
徘徊は止めようとしても止められないことが多いため、
行動を完全に封じることを目標にしない方がうまくいきます。
- 散歩できる時間をあえて作る
- 近所を家族と一緒に歩く
- 室内で軽い運動を取り入れる
など、
本人が「歩きたい」気持ちを尊重しつつ、安全にできる形を探す視点が大切です。
これは、徘徊の頻度や不安感を減らすうえでも、かなり有効なアプローチです。
■ 6. 家族が疲れすぎないためにも“正しい関わり方”は重要
徘徊は、本人に悪気があるわけではなく、
病気の症状として出てくる行動です。
だからこそ、家族だけで抱えると心身がすり減ってしまいます。
この章で紹介した
- 怒らない
- 理由を聞く
- 共感的な声かけ
- 気をそらす
- 安全にできる形を探す
という“基本スキル”は、家族の負担を減らしつつ、
本人も穏やかに過ごしやすくなるための“土台”になります。
徘徊は、本人の不安・混乱・環境の変化などが積み重なって起こります。
そのため「特効薬」のようなものはありませんが、
日々の生活習慣や環境づくりで徘徊が大幅に減ることは臨床現場でもよく見られます。
ここでは、家や生活の中で実践できる予防策をわかりやすく整理します。
■ 1. 日中に“適度な活動”を取り入れる
― 動きたい気持ちを満たすことが、徘徊の減少に直結する
認知症の方は、
「身体が落ち着かない」
「じっとしていると不安になる」
という状態から歩き出すことが多くあります。
そのため、
日中の活動量を少し増やすだけで、
夕方から夜の徘徊が減ることがよくあります。
● 活動の例
- ラジオ体操
- 家の周りの散歩
- 庭の手入れ(草むしり、植木の水やり)
- 洗濯物の取り込み
- 買い物についていく
- 一緒に料理の下ごしらえをする(野菜の皮むきなど)
これらは、
運動というより“役割を持った自然な活動”として取り入れられるため、抵抗なく続けられます。
“今日はこれをお願いできますか?”
という声かけは、
本人の自尊心を支え、「必要とされている」という感覚が不安減少につながります。
■ 2. 生活リズムを整える
― 特に「夕方の不安(夕暮れ症候群)」への対策が重要
徘徊は 夕方〜夜間 に増えやすい傾向があります。
これは、光量の低下や疲労、ホルモン変動が影響すると考えられています。
● おすすめの工夫
- 午後の遅い時間に昼寝をしすぎない
- 夕方に軽い散歩を入れる(気分転換とリズム調整)
- 夕暮れ時は部屋の照明を早めにつける
- 夕食を規則正しい時間にセットする
- 就寝前に静かな時間を作る(お茶・音楽・テレビを消す)
生活リズムが整うと、
夜間の不安・不穏 → 徘徊につながるループ を断ちやすくなります。
■ 3. 環境づくり ― “迷わない”“混乱しない”家の工夫
認知症では、見当識障害のために「自分の家なのに迷う」ことが珍しくありません。
以下の工夫は、徘徊のきっかけを減らすのに役立ちます。
● 家の中の“道しるべ”を作る
- トイレに大きなサインを貼る
- 部屋の名前を入口に表示
- 夜のトイレまでの通路に小さなライトを置く
- 玄関に「外出の前に声をかけてください」とメモを貼る
● 引っ越し後の環境への適応を助ける
- 昔から使っている家具を置く
- 写真や思い出の品で“見慣れた空間”を作る
- 家の中の構造を大きく変えない
「家が落ち着かない」
「ここは自分の家じゃない気がする」
という不安は、徘徊行動を強めることがあります。
■ 4. 本人の“習慣”をうまく活かす
― 昔の職場・日課・ルーティンが行動に影響する
認知症では、新しい記憶より“昔の習慣”の方が残りやすい傾向があります。
たとえば:
- 毎朝ウォーキングしていた
- 決まった時間に仕事へ行っていた
- 夕方に子どもを迎えに行っていた
- 近くの商店に必ず寄っていた
こうした習慣が“今も続いているつもり”になっていることがあり、
そこに徘徊のルートやタイミングのヒントがあります。
● 実践ポイント
- その日課を安全にできる形に“再構成”してあげる
- 家族と一緒に散歩の時間をつくる
- 昼間に一緒に「用事」をこなしておく(買い物、ゴミ出しなど)
「いつものことをやっているだけ」という感覚を満たせると、
徘徊の頻度が自然に減っていくことがあります。
■ 5. “歩きたい”気持ちを奪わない ― 安全に見守る視点
徘徊の予防で忘れてはいけないのは、
歩くことそのものは健康にも精神的にも良いという点です。
だからこそ、
- できるだけ散歩の時間をつくる
- 家族が一緒に動くタイミングを作る
- 室内でできる軽い運動を取り入れる
など、
“歩く自由”を安全に確保できるようにしていくことが、
結果的に徘徊の衝動を減らします。
徘徊は「止める」よりも
“歩くニーズを安全に満たす”方向に転換することが鍵なのです。
■ まとめ
この章のポイントをまとめると:
- 日中の活動量を少し増やす
- 夕暮れの不安を減らす生活リズムを作る
- 迷わない・混乱しない家の導線づくり
- 昔の習慣をヒントに予防策を設計
- 歩く意思を“奪わず、安全に満たす”ことが大切
徘徊は「予防の積み重ね」が何よりも効果を発揮するため、
こうした日常の工夫が大きな意味を持ちます。
次は、より具体的な危険回避のための工夫をまとめた
家の中でできる具体的な安全対策
についてお伝えします。
徘徊の予防には、本人の不安を減らす工夫と同じくらい、
「外に出てしまった時の危険を減らす環境づくり」が重要です。
安全対策は、
本人の尊厳を守りつつ、家族の“見守り負担”を減らすための大切な手段。
ここでは、家庭で実践しやすい対策を優先度が高い順に整理します。
■ 1. 玄関・勝手口の安全対策
― “出る前に気づく仕組み”が最も重要
徘徊の多くは、玄関や勝手口から静かに外へ出るところから始まります。
そのため、最初に手を入れるべきは「出入口」です。
● できる対策
- チャイム・センサーの設置
扉が開くと家族のスマホに通知がくるタイプも有効。
- ドア上部に補助ロックを設置
高い位置は視界に入りにくく、無理のない安全対策。
- ドアの色や装飾を“目立たなくする”
ドアと壁の色を近づけると、出口と認識しにくくなる。
- 「ちょっと待ってね」カードを貼る
注意を促すメッセージより、“会話のきっかけ”になる言葉がよい。
● 注意
出入口の完全固定(チェーンや鍵を隠すなど)は、
災害時の避難が妨げられるため避ける方が安全です。
■ 2. 室内の「迷いやすい場所」を減らす
― 特にトイレと寝室周りが徘徊の出発点になりやすい
夜間の徘徊は、
「トイレを探して迷う → 家の外へ出てしまう」
という流れがよく見られます。
● トイレ
- ドアに大きく「トイレ」と表示
- 夜間は廊下を足元ライトで照らす
- トイレの扉は開けておく(中が見えるだけで迷わない)
● 寝室周り
- 服や荷物は“見える収納”にする(探し物で歩き回るのを防ぐ)
- 必要ない扉は「ここは使いません」と明示
- ベッド周囲を整えて“起きてすぐ迷わない”導線にする
■ 3. 転倒・事故の予防
― 徘徊と転倒はセットで起こりやすい
徘徊している時は注意力が低いため、
段差・敷物・家具の角などが事故やケガの原因になります。
● 安全に直結する工夫
- 段差に明るいテープを貼って視認性を上げる
- カーペット・マットを最小限に(つまずき予防)
- 家具の角にクッションをつける
- 廊下はなるべく物を置かない
- 屋外の階段にセンサーライトを設置
徘徊中の“転倒→骨折→入院”は、認知症の進行を早める
大きなリスクでもあるため対策効果は高いです。
■ 4. 本人の“行動パターン”を把握して対策をカスタマイズ
― 徘徊には“時間・場所・きっかけ”に一定の規則性がある
徘徊は一見ランダムに見えますが、
実際には、
-
夕方に出やすい
- トイレの直後に外へ向かう
- 食事後に落ち着かない
- 昔の職場の方向へ歩こうとする
など、一定のパターンが存在します。
● 実践しやすいメモ方法
「出ようとした時刻」「直前の行動」「歩く方向」をメモしておくと
対策を“必要なところにピンポイントで”当てられます。
この記録は、医療機関やケアマネにも共有することで
ケアプラン改善にも役立ちます。
■ 5. 危険な場所は“やさしく遠ざける”
― 強く制限するのではなく、自然に触れにくくする
- 玄関脇の靴は見えない位置へ
- ベランダの鍵は高め位置に
- 台所はゲートでゆるく区切る(本人の尊厳のため“閉じ込め”にならないように)
- 外階段は柵・ロック・センサーライトを併用
重要なのは
「危険だからダメ!」ではなく、“自然に近づきにくい環境”にすること。
本人の安心を守りつつ安全性を高められます。
■ 6. 本人の尊厳を守るためのバランス
― 安全確保とプライバシーの両立がケアの質を決める
安全対策は必要ですが、
行動を“制限するだけ”になってしまうと、
不安・混乱・反発を招き、徘徊が悪化することがあります。
対策はいつも次の二軸で判断するのが大切です。
- 安全を守ること
- 本人が「自分らしく」過ごせること
このバランスを取ることが、
家族の負担の軽減にも、本人の穏やかさにもつながります。
徘徊への対応は、家族だけで抱え込むには負荷が大きすぎます。
いまは GPS・見守りセンサー・地域ネットワーク・警察連携 など、
「発見までの時間を最小化する」仕組みが揃っています。
ここでは、実際に“役に立つ精度の高い対策”だけを選び、
専門家目線で整理していきます。
■ 1. GPSデバイスは「徘徊対策の中核」
― 発見時間を劇的に短縮する、一番効果のあるツール
徘徊中の事故の最大リスクは、発見の遅れ。
GPSはその唯一の“時間短縮ツール”です。
● 特徴
- スマホでリアルタイムに位置を確認できる
- 靴・カバン・上着ポケットに入れられる
- 最近は“居場所が動き出すと通知”されるタイプもある
- 小型・軽量化が進み、嫌がりにくい
● 使う場所のおすすめ
- 普段履きの靴の内側(最も紛失しにくい)
- 好きなバッグの内ポケット
- 中身を触らない上着の胸ポケット
- お守り袋の中に入れてキーホルダー化
- 自転車のカゴ・歩行車のカゴに固定
特に 靴への取り付けは成功例が多いです。
本人の「置き場所の習慣」に合わせると、違和感が少なく継続できます。
■ 2. センサー(離床・ドア・窓)で「出発の前兆」に気づく
― 徘徊は“突然の外出”ではなく、“動き始め”がある
● 主な種類と役割
- 離床センサー
→ 夜間、ベッドから立ち上がった瞬間に通知
- ドア・窓センサー
→ 外に向かう時の“開放行動”をキャッチ
- 廊下センサーライト
→ 本人が暗闇で迷うのを防ぎ、転倒予防にもなる
- 居室見守りセンサー
→ 一定時間動きがない/異常動作を検知
● なぜセンサーが必要なのか?
徘徊は
「気づいたらいなかった」
という状況が最も危険です。
センサーを導入すると、
外出前の“予兆”をキャッチできて家庭の負担が大幅に減ります。
■ 3. テクノロジー導入で大切なのは「嫌がられない工夫」
認知症の方は、見慣れない物を付けられると強い抵抗を示すことがあります。
そのため、以下の点を抑えると成功率が高まります。
- 説明しすぎない(理解を求めず、安心感を優先)
- 生活の一部に紛れ込ませる(靴・バッグ・お守りなど)
- 家族が同じ物を持って見せる
- 「安全のため」でなく「安心して散歩できるように」と伝える
■ 4. “地域の力”は強力な安全ネットワークになる
― 発見確率を高める“仕組み化された連携”
家族で探せる範囲には限界があります。
だからこそ、地域ネットワークは確率を上げる“第二の安全網”になります。
● 主な連携先
- 地域包括支援センター
- 民生委員
- 社会福祉協議会
- 介護事業所(デイサービス/訪問介護)
- 駅・タクシー会社・郵便局・コンビニ
- 地域のSOSネットワーク(自治体運営)
特に 駅・コンビニ・バス会社は、徘徊時に立ち寄る頻度が高く、
事前に顔を知ってもらうことで発見が早まります。
■ 5. 神奈川県の「認知症等行方不明SOSネットワーク」を活用
― 専門家として安心して推奨できる仕組み
神奈川県は、SOSネットワークの運用が比較的整っており、
事前登録で“発見のスピード”が大きく変わるのが特徴です。
● できること
- 行方不明時、地域の協力機関に一斉情報共有
- コンビニ・バス会社・介護事業所などが探索に協力
- 保護後に身元がわかるまで一時保護
● 登録をしておくメリット
- 名前が言えないケースでも早期発見が期待できる
- 発見の“範囲”が一気に広がる
- 家族が外出中でも地域全体でサポートされる
- 過去には“登録していたから救われた”事例も多い
事前登録は自治体窓口(市区町村)で可能です。
■ 6. 行方不明になったとき“最初の30分”が最重要
― 必要な連絡と行動を事前にまとめておく
徘徊で最も危険なのは、
「家族がパニックになって動きが遅れる」こと。
事前に “連絡すべき先のリスト”と“探すべき順番” をまとめておくと、
いざという時に確実に動けます。
● 連絡の優先順位(推奨)
-
警察(110番/行方不明届)
-
地域包括支援センター
-
普段利用している介護サービス事業所
-
SOSネットワーク(自治体)
-
かかりつけ医/ケアマネジャー
同時に、
“本人が行きやすい場所”(昔の職場・実家・お気に入りの道)を
家族で共有しておくのが効果的です。
■ 7. テクノロジー+地域の力=家族の「安心」が手に入る
徘徊は、家族が24時間見守り続けるのは現実的ではありません。
テクノロジーと地域ネットワークを使うことで、
- 見守り負担を減らせる
- 事故のリスクを下げられる
- 生活の安心度が上がる
- 本人も“自由に過ごしやすく”なる
という両方を満たすケアが可能になります。
徘徊は「歩きたいから歩く」という単純な行動ではありません。
その背景には、
記憶障害・見当識障害・不安・退屈・環境ストレス など、
複数の要因が複雑に重なっています。
だからこそ、徘徊を根本から和らげるためには
“不安を減らし、気持ちが落ち着く時間を増やす” というアプローチが重要になります。
ここでは、最新の認知症ケアの知見に基づき、
本人の尊厳を守りながら日常生活を安定させるための具体策を整理します。
■ 1. “役割がある生活”が徘徊を減らす
― 「自分はここにいていい」という感覚が安心をつくる
認知症の方は、
「自分は何をすれば良いのか」
「ここでの役割がわからない」
という状態が強いストレスになります。
役割を持つと、
不安 → 落ち着きのなさ → 徘徊
という流れが大きく減ります。
● 役割の例(無理のない範囲で)
- 洗濯物をたたむ
- 植物への水やり
- 郵便物を取りに行く
- テーブル拭き
- 簡単な料理の下準備(ちぎる・並べる)
- ゴミの分別
- 雑誌の整理
大切なのは、「できる形に合わせて任せる」こと。
本人が喜んでやれる作業は、そのまま“心の安定剤”になります。
■ 2. “生活リズムの安定”は徘徊予防の根幹
― 睡眠・食事・日中活動のバランスが行動の安定につながる
徘徊の多くは
夕方~夜間に起きやすい傾向があります。
これは認知症で乱れやすい「概日リズム(体内時計)」が関係しています。
● リズムが整うと徘徊が減る仕組み
- 日中に適度に活動 → 夜に眠りやすくなる
- 夜間の覚醒が減る → 徘徊のきっかけが減る
- 朝に太陽光を浴びる → 体内時計がリセットされる
- 決まった時間に起きる・食べる → “安心のパターン”ができる
● やりやすい工夫
- 朝はカーテンを開けて光を浴びてもらう
- 夕方の昼寝を短めに(20〜30分)
- 寝室と廊下の“夜間照明”で不安を減らす
- 食事の時間のブレを小さくする
生活リズムが整うと、
徘徊が自然と落ち着いていくことは多いです。
■ 3. 環境ストレスを減らす
― 見慣れない物・音・混雑は迷いや不安の原因
認知症の方は、
「環境の変化」に非常に敏感です。
身の回りが複雑になると、
混乱 → 不安 → 落ち着かない → 歩きまわる
という流れが生まれやすくなります。
● 環境ストレスを減らすポイント
- 家の中の“動線”をシンプルにする
- 引っ越し・家具配置換えは最小限に
- 物を減らし、探し物を減らす
- テレビの音量やチャンネルの刺激を調整
- 落ち着くスペース(お気に入りの椅子・写真・音楽)を作る
小さな変化でも、本人の安心度は大きく違ってきます。
■ 4. コミュニケーションで不安をやわらげる
― 「正しさ」よりも「安心」につながる言葉を
認知症の方は「言葉の内容」よりも、
声のトーン・表情・雰囲気を敏感に感じ取ります。
● 安心につながる会話の工夫
- 否定しない(「違うでしょ」ではなく「そう感じるんですね」)
- 3秒ゆっくり間を置いて返事する
- 落ち着く低めの声で話す
- “理由の言語化”より“気持ちの受け取り”を優先
● 不安を減らす魔法のフレーズ
- 「ここにいて大丈夫ですよ」
- 「一緒にやりましょうか」
- 「困ったらいつでも呼んでくださいね」
徘徊の根本には“不安”が潜んでいることが多いため、
会話の質が症状の軽減に直結します。
■ 5. 本人の「昔の習慣」や「人生の物語」を活かす
― 不安なとき、人は“慣れた道”に戻ろうとする
徘徊で多いのは、
「昔の職場方向へ向かう」「実家方面へ向かう」
という行動。
これは、脳が危険や不安を感じたとき、
“慣れていた場所”の記憶だけが強く残りやすいためです。
● できる工夫
- 昔の習慣をあえて取り入れる(新聞をとってくる、庭を掃く)
- 昔好きだった音楽を流す
- 思い出の写真を居室に飾る
- “なじみの場所”に近い雰囲気を家の一部に作る
環境が“その人らしさ”に寄り添うほど、
徘徊は自然と落ち着いていきます。
■ 6. 家族が“安心して介護できる”ことも徘徊対策の一部
― 介護者の疲労やストレスは、本人にも必ず反映される
徘徊への対応は、家族の心身に大きな負担をかけます。
だからこそ、
以下を“義務ではなく必要なケア”として捉えることが大切です。
- デイサービスを積極的に利用
- ショートステイで家族の休息を確保
- ケアマネジャーへ定期的に相談
- 夜間ひとりで抱え込まない仕組みをつくる
家族の余裕は、
本人の“落ち着き”にも直結します。
■ 7. 徘徊は「悪い行動」ではなく「SOSのサイン」
― アプローチが変わると、症状も自然と落ち着いていく
徘徊は「止めるべき危険な行動」という捉え方をされがちですが、
実際には、
不安・迷い・退屈・体内リズムの乱れ
といったサインの表れです。
行動の“意味”を理解し、
不安の原因を取り除くことで、
徘徊は大きく減っていきます。
■ 章のまとめ
- 徘徊は本人の不安・混乱・役割喪失などのサイン
- “不安を減らす工夫”が最も根本的なアプローチ
- 役割づくり、生活リズム、環境調整、コミュニケーションが重要
- 本人の人生歴を活かすと安心につながる
- 家族が休める仕組みも徘徊対策の一部
- 徘徊は「止めるもの」ではなく、「落ち着く環境をつくる」ことで自然に軽くなる
徘徊は、認知症の中でも家族の負担が大きく、
「どうすれば止められるのか…」と悩みが深まる行動です。
けれど、その背景には必ず理由があり、
理由に寄り添うほど、徘徊は少しずつ落ち着いていきます。
本記事で整理したように、
徘徊は“危険な行動”であると同時に、
本人からの 不安・混乱・困りごとのサイン でもあります。
● 徘徊を和らげる視点のまとめ
- 原因は記憶障害・見当識障害・不安・環境要因が重なったもの
- 対応は「怒らない・否定しない」が基本
- 安全対策(玄関・室内・転倒予防)は“家庭の守り”になる
- GPS・センサー・地域ネットワークは強い味方
- 生活リズムの安定が、徘徊の根本を整える
- “役割がある生活”は安心感を生み、不安行動を減らす
- 家族が休める仕組みを整えることも、ケアの一部
● 徘徊は“止めるもの”ではなく、“落ち着ける環境をつくるもの”
認知症が進行しても、
本人は不安・寂しさ・落ち着かなさを感じています。
その内側にある気持ちに寄り添い、
安心できる生活リズムや環境が整うほど、
徘徊は小さく、静かになっていきます。
「どうしようもない行動」と感じる場面でも、
視点を変えることで“対応できる部分”が必ず見えてきます。
家族の不安が少しでも軽くなり、
本人も安心して過ごせる時間が増えていく――。
そのために必要な対策と視点が、この記事で整理できていたら幸いです。
💌 脳と心を整える “50代の知恵袋” をお届けします
老けない脳のつくり方、ストレスに負けない心の整え方、毎日を気持ちよく過ごすセルフケア…。
ブログでは書ききれない“深い内容”を、メルマガで限定配信中です。
● ダウンロード特典(脳活ワーク・季節のチェックリスト など)
● 最新の脳医学 × 心の健康コラム
● 50代女性のための季節のセルフケア術
を無料で受け取れます。









